肉類のなかで日本でもっとも消費される量が多いのが豚肉です。豚はイノシシを家畜用に改良したものなのですが、人間との関わりは古くからあり、歴史的には紀元前2800年ごろにはヨーロッパからアジアにかけて豚肉が食べられていたそうです。日本ではイノシシが主に食べられていましたが、明治時代以降日本全国に広がっていったと言われています。特に銀座の洋食屋さんのポークカツレツがきっかけで全国に広がったことも有名な話です。
また沖縄では明治時代以前から、豚を食べる習慣があり県民一人当たりの年間消費量がもっとも多いと言われ、独自のアグー黒豚と呼ばれる種類が飼育されています。アグー黒豚は琉球王国時代より続く血統だそうです。
一見脂身がありカロリーが高そうな豚肉ですが、意外と低カロリーで豚肉の脂身にはコレステロールを低下させる働きもあるそうです。また疲労回復に効果があると言われているビタミンB1や脳の働きを活発化させるビタミンB12が豊富に含まれています。
豚には銘柄豚もしくはブランド豚と呼ばれる豚が全国各地にいます。銘柄豚を名乗るための基準はないのですが、交配により優秀な特徴のある豚を登録したり、育て方や餌に独自の工夫をしている豚なども登録されることがあります。銘柄豚は全国で200種類以上いると言われていて、ここではすべて紹介する事は出来ませんが銘柄豚の中にはさまざまな特徴があり、その特徴にあった調理方法の料理を食べて見るのも面白いと思います。
また最近スーパーなどで見かけるSPF豚とは特定の品種の豚を示しているのではなく、一定の基準で育てられた豚の事です。一定の基準とは母豚から子宮ごと子豚を取り出し、無菌室で育てられ、加熱滅菌した餌や水を与えて飼育し特定の病原菌を持たないようにした飼育、繁殖方法です。SPF豚は認定を受けた養豚農家・牧場でしか生産することはできません。
また「無菌豚」と混同してしまうことがありますが、「無菌豚」とSPF豚はまったく異なります。SPF豚は無菌状態で繁殖、飼育していても善玉菌は体内にいますので生で食べる事はできません。
SPF豚とは特定の病気の原因となる菌を持たず病気になりにくい豚なのです。SPF豚の肉は臭みがつきにくく、肉質がやわらかいう特徴がありますが、豚の品種が決まっているわけではないので、SPF豚の中でも品種による肉質の違いがあります。
衛生費などのランニングコストは通常の豚より安くなるのですが、個体数が通常の豚より少ないため逆に通常の豚より高値で売られる場合もあります。
現代の豚は、品種的にも改良され飼育効率(1Kg体重を増やすのに必要な餌の量)は牛が8Kgなのに対し豚は3Kgとされ生産効率が非常に高いです。
【イベリコ豚】
イベリコ豚とはスペイン西部地方のみで飼育されるイベリア種というスペイン原産の黒豚の事です。スペインの豚コレラの影響で輸入が禁止されていましたが2004年に輸入解禁となり、上質な肉と甘みのある脂身により日本でも美味しいと評判になりました。黒い脚と爪をもつ傾向があり、スペイン語では「黒足の豚」と表現されるそうです。
基本的に10ヶ月まで樫やコルク樫の森で天然穀物飼料や牧草、種子、草の根を自由に食べさせ、11月から3月まで自然放牧で肥育されます。その際はドングリや球根植物を食べて育ち、また放牧中の運動で脂肪が霜降り状に付きます。
一般的に「イベリコ豚」と言われるものは50%から75%以上の純粋なイベリコ豚の血が流れているものを指します。また同じイベリコ豚の中でも独自にランク付けされていて、イベリコ豚のイメージである「ドングリを食べて育った豚」にもっとも近く最高級に位置づけられているのがベジョータと呼ばれ、放牧に加え体重増加のために穀物を与えたレセボ、どんぐりなどの独特の飼養方法を行わず穀物飼料を与えて育てられたピエンソとなります。
イベリコ豚の中でも飼育方法などにより精肉に差がありますので、イベリコ豚のランクも重要な指標となります。また通常の豚肉の脂質は36度で溶けるそうですが、イベリコ豚の脂質が溶け出す温度は20度前後と言いますから驚きです。
【高座豚】
神奈川県の旧高座郡地方で生産されている豚です。原種はイングランドの中ヨークシャー種ですが、各養豚家で交配に工夫され、美味しい豚肉として有名です。特徴としては低温で溶け出す脂質と赤身のバランスが良く、上品な味と言われています。
【鹿児島黒豚】
黒豚は純粋なバークシャー種のみ黒豚と表示できる様になり、成長速度が遅く、生産コストはかかってしまうのですが、肉質がきめ細かく、味が濃いという特徴を持っています。特に鹿児島で生産されている鹿児島黒豚が有名です。
【東京X】
近年、TV番組などで紹介され有名となった東京X。その名のとおり東京で生産されています。東京Xは鹿児島の黒豚バークシャー種と中国の「北京黒豚」さらにデュロック種を掛け合わせて誕生したそうです。通常豚の品種改良には10年の月日が必要だそうで、各豚のそれぞれの特徴を上手く組み合わせるには並大抵の苦労ではなかったことでしょう。
肉の質にこだわり、生産性を重視していないため、まだまだ十分な生産量とはいえず、なかなか目にする機会がありませんが、ビタミンを普通の豚の2倍以上有し牛肉同様に霜降りになることが特徴だそうです。
日本で本格的に牛肉が食べられ始めたのは、明治の文明開化以降で牛なべ屋(すき焼き)が流行しました。国産牛肉は一頭ずつ大切に肥育する飼育方法が取られて、生産効率の豚より悪いため豚肉よりも高価な肉とされてきましたが。牛肉の輸入自由化によって日本国外から安価な牛肉が入ってくるようになりました。
牛の中でも特に高級と言われているのが和牛ですが、和牛とは日本国産のすべての牛を言うのではなく、神戸牛や松坂牛などが代表格であり国内の約90%を占める黒毛和種、高知県や熊本県が主な産地の褐毛和種、青森県などで飼育される日本短角種、山口県の一部で飼育されている無角和種の4品種を言います。ちなみにこれらの牛は明治時代日本在来の牛に外国種を交配・改良したものです。
【但馬牛】
但馬牛は、兵庫県産の和牛で黒毛和種の一種です。肉質が良く、神戸牛や松坂牛などの銘柄牛のもと牛として有名です。 特徴としては赤身の中に、脂肪が非常に鮮やかに入った「サシ」が和牛のなかでも最もできやすいと言われています。また海外品種との交配が積極的に進められた明治維新以降でも、兵庫県では但馬牛の純血を保った改良を続けて、優秀な但馬牛だけを交配に用いて現在のような高級牛肉を生みだしました。
【神戸牛】
もと牛は但馬牛です。兵庫県で飼育し指定された食肉市場で処理され、かつ厳しい規格をクリアーした牛肉です。松坂牛、近江牛(もしくは米沢牛)とあわせ日本三大和牛の1つとされています。
【松坂牛】
松坂牛とは「黒毛和種」の「未経産(子を産んでいない)雌牛」で、条件をクリアーして松阪牛個体識別管理システムに登録された牛をいいます。但馬牛を中心に全国各地から子牛を買い入れ、飼育されます。日本三大和牛の1つです。
【近江牛】
近江牛は滋賀県で肥育された黒毛和種で、高級牛肉に位置づけられています。牛の肥育履歴偽装事件を受け、平成17年に「優秀な子牛を導入もしくは生産し、滋賀県内で最も長く肥育した黒毛和種でかつ、JAS法に定める原産地表示が「滋賀県産」と表示できるもの」が近江牛の定義とされました。
【前沢牛】
前沢牛は岩手県奥州市前沢区で肥育される黒毛和種の和牛です。但馬牛を種雄牛に取り入れ、優れた血統を残し霜降りの高級牛肉として知られる様になりました。ちなみに「○○牛」と「○○産和牛」では「○○牛」と名づけられた牛肉の方が上位の規格をクリアーした牛肉となるようです。
【鶏肉】
市場に出回っている鶏肉には、地鶏、銘柄鶏、ブロイラーの3種類があります。地鶏と銘柄鶏の区別はつきにくいのですが、地鶏の代表格は名古屋コーチンや会津地鶏、軍鶏など、銘柄鶏では赤鶏や伊達鶏などが有名でしょうか。
日本食鶏協会では地鶏は明治時代までに定着した在来種を50%以上と定めています。また、銘柄鶏はヒナが在来種50%未満の鶏やブロイラーなどですが飼料や飼育方法を独自に確立し、それぞれ様々な特徴をもっています。その他にも、飼育期間や飼育方法なども規定されています。
【名古屋コーチン】
地鶏のなかでももっとも有名なものの一つではないでしょうか。明治時代に中国産の「バフコーチン」と呼ばれる鶏と名古屋の地鶏を交配させ作られました。肉質は赤味を帯び、適度に香りの良い脂肪があり、弾力性があると言われています。また名古屋コーチンの卵は、こくがある濃厚な味わいで黄身の色が濃く人気があります。
【比内地鶏(比内鶏)】
比内鶏は、秋田県北部の米代川流域を中心に、古くから飼育されてきた鶏で、地鶏のなかでも、縄文時代以前から比内地方に生存していたと考えられる日本固有の鶏です。
1942年に天然記念物に指定され、比内鶏は食べることが出来なくなりましたが、比内鶏の特徴を受け継ぐ比内地鶏が生み出されました。肉は歯ごたえがありながら加熱しても固くなり過ぎず、肉の味が濃いと言われ、薩摩地鶏や名古屋コーチンと並んで三大地鶏の一つに挙げられています。
【薩摩鶏(薩摩地鶏)】
三大地鶏の一つ、薩摩地鶏は九州南部で定着した大型の地鶏のことを言います。1943年に天然記念物指定を受けた薩摩鶏と白色プリマスロックと呼ばれる鶏とを掛け合わせて誕生しました。歯ごたえが良く噛めば噛むほど味が出ると言われ、鹿児島県内では刺身やたたきなど生食用に用いられるそうです。
【しゃも(軍鶏)】
軍鶏はタイ原産の鶏で闘鶏用などに用いられることで有名です。日本には江戸時代初期ごろに伝わったとされていて、その後全国各地で飼育され多様な品種が生み出されました。軍鶏は気性が荒く、他の軍鶏と同じ場所で飼育すると喧嘩してしまうので、食用として飼育は難しいと言われ、その肉は高級品として扱われています。
有名な品種では福島県川俣町の特産品である川俣しゃもや滋賀県の近江しゃも。茨城県の奥久慈しゃも、薩摩しゃもなどが挙げられます。しゃもは筋肉が発達しやすいので、歯ごたえがあり、またコクがあると言われています
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